Q&A

Q1 いま、世間では心理学に人気があるようですが、心理学は何をする学問なのですか?

A1  基本的には、心理学は人間がなぜこのように行動するのかを理解し説明することをめざす学問です。もちろんこのような目的を持つ学問は他にもたくさんあります。 たとえば、生物学や生理学、解剖学などは生物としての人間の構造や仕組みから人間を理解します。文学も人間について洞察を加えます。社会学も社会の仕組みや、社会現象を通して人間理解をめざします。

では、心理学はどのような考え方と方法論で人間理解をするのでしょうか。心理学は、人間の精神的働きに見られる一貫した傾向や法則性を見つけだし、このような働きを生じさせるような精神的仕組みと構造を仮定して人間を理解しようとします。性格とか知能とか態度とかの概念も、重さや長さを持つ手で触って確かめることができませんが、人間を理解する有効な心理学的概念なのです。

次のような例を考えてみましょう。

テレビゲームで遊んでいるとします。ゲームソフトを交換するといろいろなゲームを楽しむことができます。このときゲームの機械の仕組みは人間でいえば身体の構造と仕組みに相当します。ゲームソフトの構造が人間の精神的活動の構造と働きに相当します。ゲームソフトの場合には、すでにどのようなプログラムにすればどのような働きをさせることができるということがわかっています。もし、この仕組みがわかっていなかった場合には、ゲームを動かしてみて、このように操作したらこのように画面が変わるといったように、いろいろ操作を変えて確かめ、それらの情報を整合性を持つように統合して、おそらくこのソフトはこういう仕組みになっているに違いないといった推論をすることができます。心理学が人間の精神的働きを理解するのも、これに似たところがあります。様々な条件のもとで人間がどのような行動の仕方をするのか。この情報をもとに、そのような行動をするのは精神的仕組みがこのようになっているからに違いないと考えるのです。

ちょっと、難しい話になりました。

Q2 心理学を勉強すると人の心を読むことができると聞いたことがあるのですが、本当ですか。

A2  人の心を読むと言えば自分の都合のいいように操るといったニュアンスがありますが、心理学の姿勢としてはふさわしくありません。ただ心理学は人の行動を予測する学問とは言えます。また臨床心理学では、その人を理解するために査定(アセスメント)を行います。ただ人の心は奥深く、いくら探ってもわからないから面白いという面もあります。

Q3 占いや超常現象などに興味があるのですが、心理学ではこういうことを学ぶのですか?

A3  すくなくともこの心理学選修ではこういったことは学びません。占いそのもの、超常現象そのものを研究対象にすることはありませんが、ただそのようなことになぜ興味があるのか、なぜ信じるのかについては興味関心の対象になります。

Q4 結局のところ、心理学を学ぶことで何が得られるのですか?

A4  心理学は、人間のあるがままの姿を事実として受けとめます。そのような謙虚な人間理解は、現実のこの社会的環境に生きる私たちの適応を理解し援助する上で基本的に必要なことといえます。教育はヒトが人間になっていく上で必要な作用です。様々の人間文化を獲得し、他者との関係を維持し、社会的役割を果たしながら、固有の私としての価値を具体的に表現して生きていく。その過程のすべてにいろいろな形の教育(学ぶ側からいえば学習)が関わっています。このような過程に関わっていく上で、人間の仕組みや性質、発達のプロセス、社会的存在としての生き方、適応とよりよい生き方の実現ということなどについて深く理解することは大切なことと言えましょう。

Q5 将来は臨床心理士の資格をとってカウンセラーやスクールカウンセラーのような仕事に就きたいのですが、大丈夫でしょうか?

A5  臨床心理士の資格は、日本臨床心理士資格認定協会が認定するもので、一定の心理学的知識と技術、臨床経験を資格認定試験の受験基礎資格とし、試験に合格して認定されます。大学学部段階で心理学の広い分野にわたって一定の履修をしておき、さらに大学院で臨床的専門性を身につけ、臨床経験を有することが不可欠です。つまり臨床心理士になるには本心理学選修を卒業した上で、さらに指定大学院へ進んで研修を積む必要があります。幸いに本教育学研究科の学校臨床心理学専修は、大学院のカリキュラムの中に臨床実習を用意しており、修了すればそのまま臨床心理士の受験資格を得ることのできる第1種指定校です。大学院まで進んで臨床心理士になるという長期的なプランを今から考えておくのもよいでしょう。

詳しくは学校臨床心理学専修をごらんください。

Q6 心理学は文系だと思っていましたが、聞いたところによると統計をやったりパソコンを使ったりして、ずいぶん理系のところがあるようです。数学苦手のわたしでも大丈夫でしょうか?

A6  心理学はサイエンス(科学)として人間理解をめざします。科学は妥当性、信頼性、論理的整合性、普遍性、客観性、公共性などによって保証されます。そのための一つの方法論が最も論理的整合性を持つ数学的思考(実際にはさまざまな統計的手法がほとんど)です。とはいうものの、私たちは数学をやるわけではありません。数学が提供してくれる方法を利用して心理学的論理の展開をします。あるいは統計的手法でもってデータから結論を導きます。数字を使うからといってそれほど難しいものを使うわけではありません。実際に手計算をすることはほとんどなく、今日ではパソコンを使って数値処理を行いますので心配は要りません。ただどのようなプロセスを経て結果が導き出されるかはあらかた理解しておく必要はあるでしょう。

心理学の領域はとても幅が広く、そのすべてが数学的方法を駆使するというわけではありません。たとえば、丹念な事例分析を積み重ねて了解的に現象を明らかにすることも重要な手法です。その代表的な領域が臨床心理学の分野です。近年では、社会心理学などの分野でも、必ずしも統計的手法に依存しない研究も盛んになってきています。

Q7 臨床心理学も数字を使うのですか?

A7  臨床心理学は主として心理的な問題を抱えて適応困難な人の理解と適応回復のための援助をし、より健康な人生実現のための援助をめざします。この分野のアプローチは、一般的な心理学とは若干違っています。事例の綿密な検討と了解的方法によって人間理解を行います。いわば行動や言葉の意味的理解、洞察的理解による方法です。したがって、他の分野ほどには数字を扱わないことが多いでしょう。しかし、全く用いないというわけではなく、臨床分野でも数字を使う研究はたくさん行われています。

Q8 心理学を活かした職業にはどんなものがあるのですか?

A8  心理学をストレートに活かす、いわば心理学で飯を食っていく職業はそれほど多いとはいえません。また、就職の機会も多いとはいえないでしょう。しかし、心理学を学ぶことは「人間ってこんなんだ」という深い理解を身につけることができますし、心理学的な問題へのアプローチの仕方を獲得することができるはずです。学校現場において、心理学についての素養は必ず活かすことができるでしょう。

心理学の専門的職業としては、相談やカウンセリングの職業、心理学的検査を行う職業、マーケッティング調査の職業、犯罪捜査の基礎分析の職業などがあります。これらの職業の多くは公務員としての職業です。具体的には、児童相談所相談員・心理判定員、鑑別所法務技官、福祉機関の相談員、科学捜査研究所技官などです。これらは専門職として関係機関が採用試験を行います。そのほか、病院の相談員や心理判定員などは欠員が生じたときに採用が行われることが多いようです。

カウンセラーを志望する人が近年ふえていますが、必ずしもカウンセラーとしての採用の機会は多いとは言えません。カウンセラーとしてのみで生計を立てていく条件も、実際には十分に環境が整っているとは言えません。この点については十分に理解しておいてほしいと思います。

Q9 私は自分の性格や生き方の問題で悩んでいます。心理学を勉強すれば本当の自分を発見できて自信を持てるようになるのではないかと考え、この心理学選修を志望しようと思っています。問題は解決できるでしょうか?

A9  残念ながら何とも言えません。近年、あなたのように自分の問題解決のために心理学を勉強したいという動機の方が増えているように思います。それはそれでいいのですが、何らかの救いをストレートに心理学に期待することは、大学における学問としての心理学を学ぶ構えとしては一考を要します。まずは心理学という学問を通して冷静に(ストレートに自分の問題に結びつけることなく)人間について理解を深め、心理学的人間理解の眼を養った上で、あらためて自分自身の問題を見つめる方が大切なように思えます。心理学に近づきつつ同時に心理学と距離を置く。この感覚をもっていた方が自分にとって心理学が役立ちます。また、あらゆる人間の問題や悩みなどが心理学によって解決できるとか、理解できるといった過剰な期待を持つと期待はずれの結果になります。逆に人の心の奥深さにますます感じ入ったり、また自分の良さの生かし方については心理学が教えてくれるでしょう。

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