野球と心におけるアンカーと波

田邊敏明

今年のプロ野球はいつもと様子が変わっている。

大きな連勝と連敗を繰り返すチームが多いのだ。連勝しているときと連敗しているときとでは、まるで別のチームである。今年に限ってどうしてこういう現象が起こっているのか。

私の好きな球団は広島東洋カープである。そのカープが今年は珍しく、連勝連敗を繰り返している。4月はもう終わりではないかと思うくらいに負け、そして5月は20勝という、どこまで勝つんだというくらい勝ちに勝った。ところが、6月に入ると、7月にかけて11連敗を食らった。もう永久に勝てないのではないかとさえ思った。

昨年と違うというのは、新井というお兄さん役の選手が引退したこと、どんな不調の時でも堅実なバッティングをする丸が巨人にFA移籍したことの二つである。

心理学では、自動運動といって、刺激が動いているどうかを判断する準拠粋を失うと、刺激がとめどもなく動くという現象がある。船もアンカー(錨)を失うと、どこに行くかわからない。台風で流され、関西国際空港に大きな被害を与えたタンカーは、まさにアンカーを失ってしまったようだった。(実際はアンカーが働かないほどの自然の力であった)いったんどちらかのスイッチが入ると、止めどもなく動いて歯止めが利かない。準拠粋もアンカー(錨)もとめどもなく動くものを静止させる役割を果たしている。

元カープの新井選手は、良いまとめ役で、歯止めがなかなくなるチームをなんとか食い止めていたのかも知れない。丸選手も、チームの調子が悪くなっても、ぎりぎりのところで支えていたのかも知れない。

一方で、野球では勝ち負けに波がある。野球では、勝ち続けていくうち、だんだん疲れて、バッティングの調子が悪くなり、連敗に向かう。サヨナラゲームは、チーム力が落ちているときか、上昇している過渡期に現れやすい。過渡期を過ぎると、またもう一方が現れる。連敗が続いても、だんだんその中で良いプレーが見られるようになって連敗が止まる。

人の精神も同じではないか。精神は、止めどもなく過激な方向に流れてしまうことある。

また無理をしていると、疲れが溜まり、だんだん調子が悪くなって、症状があらわれるようになるが、休むとまた生活に回復の兆しが見えてくる。結局は、自然の治癒力に任せるところが大きいが、心理師は、クライアントのつらい気持ちを聞いて、心の荒れを食い止めるアンカーの役割を果たしたり、心の波の中に回復の兆しを見つけてクライアントに知らせてあげたりすることもできよう。