私事

小野です。私事ですが,この度,日本心理学会から国際賞奨励賞をいただきました。皆様,本当にありがとうございました。今回は受賞講演のスライドを作っている時に思い出した話を書きたいと思います。

山口大学の心理学選修には,学生(学部3年生)が自分で好きなテーマを考えて実験・調査をして発表する,という授業(通称ミニ卒)があります。数年前,その授業で,私はある学生から実験案の相談を受けました。その相談は,ある先行研究の方法を改善して実験したい,という内容でした。ただ,そのためには新しいアイデアや何らかの工夫が必要でした。その学生は,帰ってからも実験案を考えていたそうですが,バイト中に新しいアイデアを思いついたらしく,翌日,私の研究室に駆け込んできて,「先生,こんなんどうでしょう!」といって,その実験案を話してくれました。その実験案もおもしろかったのですが,普段,冷静なタイプの学生が,必死に自分の考えた実験案の話をしているのを見て,私はなんだか嬉しかったのを覚えています。

ただ,その反面,その学生に対して,私は少し「羨ましい」と思っていました。私は現所属に赴任してからは,主に学生を指導する側にまわっていて,自分で一から実験案を考えてデータをとることは,ほとんどなくなっていました。私は,学生が必死に考えた自分のアイデアで研究をすすめようとしている姿を見て,自分もこれがやりたかったんだ,と感じました。使い古された表現になりますが,この学生は私に大切なことを思い出させてくれたような感覚でした。この件があってからは,私はどんなに忙しくても1年に研究1つ分は自分でデータをとるようにしています。こうして文章にしてみると大した変化ではないように見えますが私にとってはなかなかの意識改革となりました。そして,こうした変化が今回の受賞に繋がったとも思っています。

今回のコラムをアップするにあたってその学生さんに上記の話を確認してもらったのですが,本人はエピソード自体は覚えてたのですが,本人にとってはそんな特別なことではなかったそうです。まぁ,そんなもんですよね。